人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

落語に行ってきました

by u-ko_suzuki
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のトラックバック
ライフログ
リンク
絶品!キャットフード

検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
死神
毎度ばかばかしい作文でゴキゲンをうかがいます。
たくさんのコラムが軒を連ねております、お後お目当てお楽しみに、ほんの少しばかり、お付き合いのほど、よろしく願っておくわけでございますが。

私にはオーストラリアに友達がおりまして、といったって、コアラやカンガルーじゃないですよ、私はムツゴローさんじゃないですからね。
同じ年の女性で、同じような体型をしています。元看護婦。その彼女の住むのは、大都会メルボルン‥‥から、さらに西に行った都市パース‥‥から、さらに南にハイウェイを二時間飛ばす、バンバリーという自然豊かな町。
なんたって、裏庭に野良カンガルーが出たり、野生のブルがこないように猛牛返しなる仕掛けが庭に施してあったり、ねずみ返しってのは日本史の教科書にも出てきましたけどもね、片や猛牛、片やねずみですよ。スケールが違います。
どこまでも広がる空。星は降るようで、その満天の星を見て東京生まれの東京育ちの子どもが「怖い」って言ったそうですから、なんともはや。
そんなところで育つと、人間もおおらかです。
その彼女が言うんですね。
「私はたくさんの人の誕生と死に立ち会ってきた。人が生きるというのは一本の線の上にあるもの。生まれたときにたくさんの人におめでとう、といって出迎えられるように、死にゆくときにもみんなに看取られて、たくさんの言葉をかけられて死んでいくべきよ。それは、生まれてくることと同様の価値がある。死に逝く様を周りのものに見せていくのも、大事な最後の仕事だと思うし、残されたものとして、別れの悲しみに耐えるのもまた、生きていくうえでとても大事な仕事だと思う」
‥‥これを英語でね、OZ訛りで、語るわけです。きっと、大自然の人ですから、本当はもっとこう、「大事な仕事じゃけぇの!」みたいな、方言の持つ強さもあったんでしょうけど、私が大意をくむのがやっとの英語力なもんで、そこはまあ、適当に。
いやしかし、ちょっと、考えちゃいました。そのときの私の格好は、シャレコウベと枯れ尾花のアロハシャツ。
夏の怪談話を聴きにいくためだけにちょっと気張って買ったものの寄席に行くチャンス未だなし、という、行かず後家のような服でした。そんな服を着ていたせいでしょうかねぇ、ついうっかりうちのおじいが死にそうで、なんて話しちゃって、そのまま死生観のお話に突入したわけで、猛牛返しの死生観とねずみ返しの死生観、そのまま生きていく足の踏ん張り方みたいなものを感じました。

うちのおじいの枕元に座っている死神は、どっち側なんですかねぇ。
落語に出てくる死神は、頭のほうに死神が座ってりゃあ、呪文を唱えて死神を追い払ってしまえば病が治ると教えます。けど、脚のほうに座ってるのは駄目だ、触っちゃいけねぇととある野郎に教えました。この野郎が、大金ほしさに足のほうに据わっている死神をだまし討ちしたものですから、さあ大変!
・・・と言う、ご存知、「死神」は、私の大好きな噺のひとつ。ハリウッドに進出するような、震え上がるほどのホラーというわけでもないんですが、人の心の浅ましさがもっとも怖いと背筋を少し涼しくさせる効果は十分です。夏は怪談ですよ。

元気に植物状態だったおじいに、いよいよ死期が近づいているみたいです。
がんばってがんばってふんばってふんばって、ずっと寝たきりでも、ただ生きているというその事実だけで周りのものを支えてきた、それこそがそのままおじいの生き様でした。
私はそんなおじいが大好きでした。死神は、多分、もう枕元じゃなく、足元にくっついているんだろうな。しかたねぇや。生まれてきた以上、人は必ずいつか死ぬんだ。でも、おじいはすげぇいい奴で、飲むと飲んだで楽しい漢だったし、田舎で生まれ育って、足腰は猛牛並みに強かったりしますから、きっと死神もさっさとどうこうしようってんじゃなく、なんとなくおじいの魂とじっくり語らっていたりするんじゃねぇかと想像しています。最期のときに、苦しまないですむように、死神さん、ちょいと頼みますよ。・・・今は、そんな気持ちです。
ちょっと切ない心持になりました。こんなときには寄席で笑い倒すのが一番だね。ああ、また寄席に行きたくなりました。
by u-ko_suzuki | 2008-08-04 15:27