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落語に行ってきました
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芝浜
毎度ばかばかしい作文でゴキゲンをうかがいます。スズキユウコと申します。
あら。
今、ネットでお買い物をしたもんだから、名前がフリガナモードになっちまってるよ。
何を買ったのかと申しますと、ポッドキャスティング寄席、ニフ亭の、限定手ぬぐい840円也でございます。
実は私、手ぬぐいコレクターでして。
手ぬぐいはいいですねぇ。
軽くて邪魔にならず、すぐに乾くし、大きさも価格も、使い勝手もいい。
涙拭くハンカチにだって、暑さをしのぐ帽子にだって、これからの季節は防寒のスカーフ代わりに、骨折したときには添え木を当てる三角巾代わりにだってなりますよ。だから、必ず一枚持って出ます。手ぬぐいは便利。財布になったり、煙草入れになったり、手紙になったり……おっと、そりゃあ、噺家さんの場合だ。噺家さんの場合は、私以上に手ぬぐいは必需品。おや、何だい、落語家さんは、そんなにしょっちゅう骨折して添え木に当て布を…、ってわけじゃあ、もちろんなくて、この、手ぬぐいと扇子が、唯一の小道具だったんですね。
もっとも、この小道具をもっともらしく見せるために、ひび、骨を折ってらっしゃるんでしょうがね。

以前、寄席に参りましたら、こんな風景を見ました。
前座さんが、高座返し……というんですか、あの座布団をひっくり返して、お名前を書いたメクリを替えて次の演じ手を客席に知らしめる、一連の作業中に、なぜだか手ぬぐいをひょいと出したんですね。
その手ぬぐいが、なんともかわいい桃の柄。百円ショップで売っているものだったんです。ええ、お察しの通り、私も愛用してたんです。緑の地に桃の柄の、派手なヤツです。
ああ、前座さんなんだなあ、と、思いました。
真打さんはもちろんのこと、二つ目さんは寄席には出ませんが落語会なんかでもまず、落ち着いた色味の手ぬぐいを持ってらっしゃいます。
桃柄のそいつだと、小道具としてはまず使えない。たとえば「芝浜」の皮財布が、軽々しい派手な手ぬぐいだったら、勝五郎に芝浜で拾われる前に、誰かがさっさと見つけちまいますからねぇ。
つまり、小道具が小道具足りえない。
100円ショップ謹製ってのも、なんていうか、大金が入った財布にゃ向きません。
両面染めてあるのではなく、片面だけの安い印刷で、洗えども洗えどもごわごわの質感。糸切り歯でちょいと噛み切って鼻緒をすげることも出来ない、色っぽさとも無縁の、四方を中国人の女工さんががっちり丁寧にミシンかけしました、はんかちニシテハ、アマリニモ長方形デス、ニッポン人不思議ネ。という代物です。
それでも、見習いから前座に上がって、楽屋入りして高座返しをする身の上、その前座さんは中国人の女工さん以上に勤勉に修行されておられるのでしょう。今は100円手ぬぐいでも、いつの日か、前座の年季が明けて、二つ目を経て、真打になり、ご自分の名が入った手ぬぐいを作るその日まで、桃柄ちゃん、ガンバレ!とついつい応援してしまいましたよ。「芝浜」なんかを、すっと演じられるような、あるいは「芝浜」に勝るとも劣らない三題噺をさくっと作れるような、そんな真打ちを目指して。

と、先ほどより「芝浜」の演目がちらちらと入り込んでいて、はい、今回は「芝浜」。
何でも、三題噺ってのがありまして、人、場所、物の御題を、客席から頂く。「酔っ払い、芝浜、財布」の単語を織り込んで、あの名作がその場で作られたものだってンですから、すごいです。歴史的な背景はどこぞの粋人かご隠居にお任せして、このストーリー、アタシは、おかみさんにぐっときちゃうんですよね。
酒が大好きな魚屋、勝五郎がおかみさんに促されて、一足早く河岸に出る。と、海の中には皮財布。あら嬉しや、大金が手に入っちまった。と、それを持ち帰って、どんちゃん騒ぎ、酒を飲んで寝てしまう。しかしそれらは、酔った上での幻で、これは大変……。
アタシがぐっとくるのは、勝五郎のおかみさん大事なところなンです。惚れてるんだよねぇ。
もっともこのおかみさん、肝は据わってるわ、素直だわ、賢いわ。女はかくあるべし、そうすれば大酒飲みだってこの通り。いや、男こそかくあるべし。おかみさんに惚れてるヤツに、悪いやつはいないってんだよね。
ああ、芝浜の二人みたいになりたいねぇと常々思っていましたら、天に祈りが通じたか、ある時、我が家の財産が入った皮財布がなくなりまして!

「あんた、知らないかい」
と聞く私。
「なんだ、そんなものは見ていない。お前、おおかた夢でも見たんだろうよ」
と相方。
どこかできいた会話が、何でうちの場合、反対になるかな。
「あのさ、うっかり使って言い出せないとか、そういうのは…」
「なんだお前、オレを疑うのか?」
「いやそういうわけじゃないけど、……またパソコン買ってるし」
「それを疑うっていうんだっ!」
……とまあ、夫婦善哉とは、全く正反対の方向へ。ダメだこりゃ。
んでもって、その財布はある時、冷蔵庫から出てきたりしやがってね。買い物袋から食品を出して、一緒に、てってこてってこ、しまっちゃったんでしょうね。まあ、我が家の財産はたいした大金でもないんで、私家版「芝浜」は冷蔵庫だけに、冷えた落ちで噺が終わるんですが、飲んでもないのに酔っ払ってる自分だけが、ほんのちょっと悪夢な感じ。
大事な亭主に疑いをかけるなんて、アタシは全くヒドイ女だ。せいぜい家事に精出して、粉骨砕身、立派なおかみさんにならなくちゃと反省しました。まだまだ前座気分でいたけれど、すでに結婚15年。水晶婚式も済ませたベテラン主婦の領域なのに、どうにもこうにも、お恥ずかしい。赤面、赤面。

そんな時にも、これ一枚。
手ぬぐいは、困った顔も隠せて便利です。だから、アタシは必ず持ってます、って、そんな通信販売のCMみたいな話じゃなかったですわね。お値段、800円~1500円。
ああ憎い。冷蔵庫から出てきたものが、皮の財布でなく、せめて手ぬぐいの財布だったなら! 熱冷まシートの代わりにだって、使えたものをさ。
自分の失言を悔やみつつ、反省しつつ、どこぞの大臣ではないので辞任はせずに、なーに、三歩歩けば悲しみも怒りも、ぜーんぶ忘れちゃうのが、唯一アタシのいいところでして。

おおっと、こうしゃいられねぇや、皮の財布は冷蔵庫から出してちゃんと握り締め、寄席に行ってまいります。
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by u-ko_suzuki | 2008-09-29 16:44