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落語に行ってきました
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茶の湯
毎度ばかばかしい作文でゴキゲンをうかがいます。
鈴木ゆう子と申します。何の因果か、落語好き。今日も、ほんの少しの間、戯言と、落語のお話に、お付き合い願います。

一生懸命精魂込めて育ててりゃ、そりゃあもう、どんなものでもきちんと成長するというのは世の習い。精魂込めて、食べていたおまんまだって、ちゃーんと血となり骨となり、肉となり肉となり肉となり。……そう、このメタボなお肉だって、お金、かかってるわけです。投資の結果です。おまんまだけじゃあない、お菓子やお酒や、そりゃうもう一生懸命投資して摂取した結果が、この贅肉。まさしく、贅沢なお肉ですよ、これはね。
この間、きつめのデニムをはいていましたら、こう、腹に、浮き輪状の肉がある。ソレを見て相方、
「お前の着ているのは、そりゃあもう、デニムじゃねぇ。デムニだ」
と言いやがりまして。しかし言いえて妙とはこのことで、確かにね、出ムニッとしてる。
以来我が家では、相方のジーパンがデニム、私のジーパンがデムニと、名称が変わりました。私のデムニは、相方がはくと、ぶかぶかです。
……いったいいつから、こんな変わり果てた姿になっちまったんでしょう。
ウエスト58センチだった頃に買った、勝負下着のガーターベルトが、今では片方の太ももに巻けます。同じ勝負でも、笑いをとるための勝負になっちゃあしょうがねぇ。
けれどもこんな体型になって、ひとつだけいいことがありました。それは、和服が着られるようになったことなんですね。
ええーっと、和服しか着られなくなった、という言い方もできるんですが、そこはポジティブシンキングでね。和服は、ボーンきゅっボーンの、南京豆みたいな体型には今ひとつ合わないように出来てますからね。茶筒みたいな体型こそ、理想的なんです。
デニムは出ムニになりはてても、和服は私を見放さなかった!日本の伝統文化よ、ありがとう。
そして幸か不幸か、私の和ダンスには、母と祖母の投資の結果がひしめいておりまして。売ったら二束三文の、買ったときにはとんでもない金額だったはずの、つまりは贅肉みたいな和服がね、たっぷりある。……私が気に入ってるのは、その中の二、三着というのが、これまた無駄全開という感じで、切ないんですが。
なんだってそんなに着物があるかってぇと、母が茶道の師範なんです。お茶ってのはなんですよ、お茶会のたびにその季節にあった着物だ帯だが必要になって、とんでもなくお金がかかるもんらしいですね。
でも、アタシ、LLと恥じらいもへったくれもなく大書された長じゅばん着付けながら、よくよく考えるんですが……茶道は、侘びさびの世界なワケでしょう? 贅は野暮だ。千利休が、とっかえひっかえ、いい着物を着ていたとは考えにくく、ありゃあていよく呉服屋にだまされてたんじゃねぇのかと、いぶかってるんですがね。

茶の湯、というお話がございます。
根岸の里のご隠居は、使用人の定吉を呼んで暇つぶし。かなりめちゃくちゃな知識で茶の湯をやってみます。しかし見よう見まねも程が過ぎ、お茶は青きな粉、オマケに洗剤までいれちまったからたまンない……。これを周りのものにも振舞っていく、なんとも滑稽なお噺。
同じだますんでも、こんなだまし方なら笑えます。で当人達にとっちゃ笑えないかもしれないなあ、腹、下しますからね。

それで思い出すのは、慣れないお茶会ですよ。まだ私が今の四分の一の年齢で、今の半分ぐらいしか体重がなかった頃、母の師匠のお茶会に連れられてまいりまして。
一応、作法は特訓済みです。それでも、緊張でドキドキ。目の前のお菓子はさっさと食べ終わり、お抹茶が来るのを長々待っておりました。
するとですね、急に、もよおしてきたんですね。
相手は大師匠ですよ、「茶の湯」のご隠居のように変なものを食べさせたわけじゃあないんですが、アタシがまだ子どもだったので準備、悪かったんでしょうね。
ところが、茶器の銘を訊ねる言葉は聞きかじっていても、こんなときにトイレに行きたいという隠語は知らない。
最初はもぞもぞ動いてごまかしますが、それをまわりは怪訝な目で見る。そのうちのっぴきならない事態がやってきて、聞くは一時の恥、漏らすは一生の恥なんて言葉がぐるぐるする。
ご亭主である先生が、茶さじをふいたり、竹の茶せんを片付けながら、にんまり、客を眺めます。やーっとこさ、お茶が、運ばれてくる。
ここからがまた面倒くさいんだ。こちとら江戸っこでぃ、パッときたらグッと飲みゃあいいものを、だらだら年寄りの小便みたいな切れの悪い話や作法が続きやがって、アタシの小便ならシャーッとしてすぐに終わりだよ、ああトイレ行きたいよなどと、優雅なお茶会が地獄の修行気分になって毒づいてます。
……、と、やにわにああ、もうダメだっ
「おひょう、●×#$☆ё!」
なにやら叫んだんですね。人は限界を超えると変な声を出すんですよ。もう、半分おかしくなるんです、何しろ限界ですから。
一人フラフラ立ち上がったのはいいが、今度は足がしびれてて、うまく歩けない。突如茶室に現れたゾンビが一匹、とにかく一滴ももらさないことに細心の注意を払い、極端な内股で、トイレに急ぐのでありました。
もちろん、事なきを得ましたよ。先生も、決して私を責めたりなさいませんでした。でも、思春期真っ盛りのお年頃、これは「死にたい」と思いつめるほど恥ずかしい事件でした。
お稽古の時に箸が転げてもおかしくて、どうにも笑いが止まらず、お茶碗を割ってしまい、母から破門を食らうのは、これからしばらく後のことなんですがね。

最初に「茶の湯」を聞いたときには、そんな甘酸っぱい思い出と共に、大笑いしまして。
作法を聞きかじっているだけに、おかしさ倍増。無理強いでも茶道を仕込んでくれた母に、やっと感謝しましたよ。
ああ、こんなご隠居の茶会だったらまだよかっただろうにと思ったり、厠に走る気持ちだけ、やけに臨場感が走ったり。忘れていた過去の失敗に、落語の中で出会うというのもまた、乙なもんでした。
まあ、だまされたと思って、寄席に行ってみてください。自分に似た人や、エピソードが、ちゃーんと待ってますから。だまされたと思ってったって、高い着物買わされるわけでも、ホントに腹下すわけでもないので、安心ですから。

ああこうしちゃいられねぇや! せっかくですから、和服着ていけば割引にもなる、寄席に行ってまいります。
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by u-ko_suzuki | 2008-10-06 11:06